武士の悲哀や激情、忠義を描いた作品を中心としつつ、コミカルな小品や農民たちの日常生活、人情ものも交えたバラエティー豊かな短編集。描かれた時代ごとに絵柄は違うけどどれも抜群に上手く、さすが平田弘史御大の弟にして元アシという感じ。まだまだご活躍されてほしい。
- 投稿日:2022.07.08
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徳川家も五代目(綱吉)を重ねた元禄の頃は、天下はすこぶる泰平、日毎穏やかな明け暮れが続く平和な時代であった。しかし風俗は…町人はもちろんのこと武士迄が柔弱淫靡に流れ擾乱の世相を現出した時代であった。すなわち奇異にして愚劣とも言うべき男色がすさまじいほど大流行した時代でもあった…。戸田家藩士、棚町隼人が山中で一人釣りをしていると、突如名も名乗らぬ一人の浪人が切りかかってきた。名を名乗れと一喝するや、その浪人は俺の顔を見忘れおったかと傘を脱いだ。しかしその顔は無惨な傷に覆われ何処の者かわからず……。(表題作より)
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